『君が夏を走らせる』 瀬尾まいこ
素直になりたい 素直になれない
金髪ピアスの不良高校生がひとりで1歳10ヶ月の女の子の子守りをしている。
みなさん、どう思うでしょうか?
「恐ろしい」
「こんなやつに小さな女の子を任せるなんて正気じゃない」
「ちゃんとした大人に子供を任せるべきだ」
というのが真っ当な感想でしょう。
しかし、人を見かけで判断してはいけません。
この小説の主人公大田は、金髪ピアスの不良高校生。
中学校では授業をサボってこっそりタバコを吸っていたほどの悪ガキです。
でも、大田はただの悪ガキではありません。
中学3年のときに、駅伝大会に参加したことをきっかけに彼の意識は変わりました。
陸上に真面目に向き合って、不真面目な自分から変わりたい。
でも、不真面目な生徒が多い高校で真面目に振る舞うと周囲から浮いてしまう。
素直になりたいけれど、素直になれない。
そんな大田は、中武先輩に頼まれて、1ヶ月間、1歳10ヶ月の女の子・鈴香の子守りを始めます。
鈴香に振り回されながらも、慣れない子供のお世話を必死でしていくうちに、大田は鈴香の心をつかんでいきます。
「俺にも鈴香と同じように、すべてが輝いて見えたときがあったのだ。もちろん、今だってすべてが光を失っているわけじゃない。こんなふうに俺に「がんばって」と言葉を送ってくれるやつがいるのだから。俺はまだ十六歳だ。「もう十分」なんて、言ってる場合じゃない。」
人の「がんばって」という言葉に応えて、素直に頑張ることができる大田。
頑張り屋さんの彼なら、きっと未来に向けて真っ直ぐに走っていくことができるはずです。