大学生の読書感想文

大好きな小説の魅力を紹介します

『キネマの神様』 原田マハ

小さな名画座が起こした奇跡の物語

 

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この小説を読んで、初めて名画座というものを知りました。

 

名画座とは、過去に上映された作品を格安で再上映する映画館のことです。

 

2本立て、3本立てで上映されることが多く、シネコンのように作品ごとに入場者を入れ替えしないため、お得な料金で複数本の映画を見ることができます。

 

 

そんな名画座はDVDやシネコンの台頭に押され、数を減らしてきています。

 

コロナ危機に直面し、経営が厳しくなっている名画座も多いです。

 

 

 とりわけ、名画座は「昔ながらの村の鎮守」みたいな場所だ。こぢんまりと地味な、けれど実にいい空気の流れる場所。派手な神輿もイベントもないが、綿あめや冷えたラムネや金魚すくいが楽しめる。ちょっと気になるあの子が、浴衣姿でやってくる。短い夏の、胸が苦しくなるような懐かしさ。

 そんな場所が、ひとつふたつと消えつつある。

 

 

39際独身の歩は大手企業で課長に上りつめ、シネコンの開発計画を進めていましたが、他の社員の嫉妬や恨みを買い、追い出されるように会社を辞めてしまいます。

 

同時に、ギャンブルと映画が好きで奔放な性格の父が倒れ、彼が300万円の借金を抱えていることが発覚します。

 

 

苦戦する就職活動、父のギャンブル依存症

 

苦悩する歩は名画座・テアトル銀幕で『ニュー・シネマ・パラダイス』というイタリアの名画を観ます。

 

 

観賞後、歩が綴った映画の感想文。

 

名画座を村の鎮守、名画を大輪の花火に例え、名画座の減少を嘆いた歩の名文は、歩と彼女の父親に大きな転機をもたらします。

 

 

歩と父にチャンスを与えてくれたのは、きっと名画座で映画をこよなく愛する彼らの思いを見守っていた「キネマの神様」なのでしょう。