『生きるぼくら』 原田マハ
世の中には勝ち組も負け組もいない
※本の内容のネタバレを含みます。ご注意ください。
【目次】
1. いじめられっ子は負け組か?
2. 一流企業に勤める人は勝ち組か?
3. 世の中には勝ち組も負け組もいない
1. いじめられっ子は負け組か?
主人公の麻生人生は、中学校・高校でいじめられたことをきっかけにひきこもりになります。
特に、高校時代に受けたいじめは壮絶でした。
人生は毎日壮絶ないじめに遭いながらも、我慢して学校へ行き続けました。
「学校に来なかったら、おまえの家を燃やす」と脅されていたからです。
しかし、いじめっ子が、人生が母子家庭であることをバカにし、母の作ってくれたお弁当を地面にぶちまけ、砂まみれになった弁当を食べるように強要したことをきっかけに学校へ行けなくなります。
人生は学校をやめ、「母ちゃんに、もっと楽させたいんだ」と言って働きはじめました。
近年、いじめは社会問題となり、ニュースなどでとりあげられることも多くなってきました。
しかし、「いじめられる方が悪い」とか「いじめられっ子は負け組だ」という風潮は依然としてあるように思えます。
母を思っていじめに耐え続け、母を楽させたいと思って働くことを決心した人生が、なんの目的もなく、快楽に任せて人生をいじめたいじめっ子たちと比べて劣っているとは思えません。
むしろ、人格的に優れているのは、いじめられっ子の人生の方でしょう。
2. 一流企業に勤める人は勝ち組か?
人生は派遣の仕事を解雇されてしまい、24歳まで引きこもりを続けます。
人生と共に暮らすことに限界を感じた母は置き手紙をして、家出をしてしまいます。
母が残してくれた年賀状を頼りに、人生は蓼科のマーサばあちゃんのもとへ向かいます。
人生はマーサばあちゃんの家で、おばあちゃんのもう一人の孫・つぼみと出会い、一緒に米作りを始めます。
また、祖母を金銭的に楽にさせるために清掃の派遣の仕事も始めました。
田植えの直前の時期には、人生の派遣先の介護施設で働いている田端さんの計らいで、彼の息子の純平が米作りの手伝いに来ます。
純平は一流企業でしか働く気がなく、第一志望の業界である出版社からはことごとく不採用となり、就活浪人を考えていました。
そんな純平も、米作りに参加し、父から檄を受けたことを機に考えを改め、最後まで就活を続け、農機具メーカーの子会社に就職することが決まりました。
純平は米作りを通じて、農業という自分が本当に興味を持てるものを見つけ、それに携われる仕事につくことができました。
純平は決して負け組ではなく、大企業に就職するよりも幸せな選択ができたと思います。
3. 世の中には勝ち組も負け組もいない
最近、受験や就職など様々な場において、ヒエラルキーを気にしすぎている人が多いように思います(自分も人のことは言えませんが)。
「ヒエラルキーの上位に位置しているから勝ち組、下位に位置しているから負け組」という考え方は、「上位」にいる人たちの自己満足に過ぎません。
自分の好きなことに夢中になれていることや、人の繋がりを大事に生きることの方が、「勝ち組」になることよりもよっぽど大事なことではないでしょうか。