大学生の読書感想文

大好きな小説の魅力を紹介します

2021-01-01から1年間の記事一覧

『ハグとナガラ』 原田マハ

人生を、もっと足掻こう。 ぼくは旅が好きだ。 家族旅行、高校同期との大人数の旅行、近場へのちょっとした一人旅。 どの旅にもいい思い出があります。 海の美しさに圧倒され、古き良き町並みに心揺さぶられる。 夜、旅館で布団を敷いて寝っ転がりながら、た…

『草花たちの静かな誓い』 宮本輝

草花に託したメッセージ 物語の舞台は南カリフォルニアの高級住宅地ランチョ・パロス・ヴァーデス半島。 太平洋に面した、穏やかで自然豊かなリゾート地です。 夫に先立たれ、ランチョ・パロス・ヴァーデス半島の豪邸で一人暮らしをしていたキクエは、修善寺…

『スロウハイツの神様』 辻村深月

夢追い人たちの集い 人にはどうしても譲れない理想やポリシーがあります。 特に、クリエイターと呼ばれる人は強い理想やポリシーを持っているのかもしれません。 誰も傷つかない世界を理想とし、明るい児童漫画を描き続ける狩野。 感情を徹底的に除去した世…

『あと少し、もう少し』 瀬尾まいこ

迷いながらもひたむきに走る ぼくはお正月に必ず箱根駅伝を見ます。 不思議なことに、箱根駅伝では毎年ドラマが生まれます。 下位からのごぼう抜き、圧巻の区間新記録、襷のパス寸前での繰り上げスタート、主力選手の予想外の失速... 各校の選手が駅伝に向け…

『キネマの神様』 原田マハ

小さな名画座が起こした奇跡の物語 この小説を読んで、初めて名画座というものを知りました。 名画座とは、過去に上映された作品を格安で再上映する映画館のことです。 2本立て、3本立てで上映されることが多く、シネコンのように作品ごとに入場者を入れ替え…

『ツナグ 想い人の心得』 辻村深月

人と人をつなげる不思議なご縁 ※この小説は辻村深月著『ツナグ』の続編です。 前編の『ツナグ』についても感想を書いているのでぜひ読んでください! ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ y-candy.hatenadiary.com 使者の依頼は"ご縁''だ。 祖母にも、大伯父にもそう教えられた。絶対…

『ツナグ』 辻村深月

残された者たちの思い 人は大切な人が亡くなった悲しみを乗り越えながら生きていく。 「また会いたい」「また話をしたい」 そんな思いがあっても、その人が死んでしまった後ではその思いは叶わない。 もし一度きりでも死者と会って話ができたらどうなるのだ…

『楽園のカンヴァス』 原田マハ

アートにかける人々の情熱 美術館には人を惹きつける独特の雰囲気がある。 一心に絵を見つめる来館者たち。その視線を受け止め、どっぷりと鎮座する鮮やかな作品の数々。 静かで厳かで、それでいて心沸き立つような不思議な感情。 そんな感情を抱くのは、魂…

『神様からひと言』 荻原浩

へっぽこ主人公の逆転劇 お客さまの声は、神様のひと言 中規模食品メーカー珠川食品の社訓として掲げられている言葉です。 一見もっともらしいことを言っているようですが、会社の実態は隠蔽、上司への媚びへつらいといった悪習はびこる旧態依然としたもので…

『さよなら獣』 朝比奈あすか

変わっていく自分と変わらない自分 10歳のとき、学校で1/2成人式というよくわからないイベントがありました。 10歳の子供から見て、大人になるのは当分先のことに思えるし、「あともう10年で成人ですよ」なんて言われても実感がわきません。 ただ、20歳にな…

なぜ小説を読むのか?

【目次】 1. 小説の価値 2. リベラルアーツと小説 3. すぐに役に立つものはすぐに役に立たなくなる 1. 小説の価値 人はなんのために小説を読むのだろう? 小説なんかなくても人は生きていける。 でも、書店には多くの小説が並んでいて多くの人が小説を買って…

『奇跡の人 The Miracle Worker』 原田マハ

自由を得るための戦い 明治時代。 日本が富国強兵、殖産興業などを掲げ、欧米に追いつけ追い越せと躍起になっていた時代です。 福沢諭吉は明治5年から『学問のすゝめ』を発行し、自由・独立・平等という日本人が今まで知らなかった価値観を紹介しました。 明…

『夜のピクニック』 恩田陸

友達との特別な時間 みなさんの思い出に残っている学校行事はなんでしょうか? 文化祭、体育祭などさまざまな行事が思い浮かぶと思います。 ぼくが数ある行事の中で、一番印象に残っているのは高校時代の強歩大会です。 強歩大会というのは、全校生徒が50km…

『そしてバトンは渡された』 瀬尾まいこ

繋がれる幸せのバトン 大家さんにお父さん、おばあちゃんにおじいちゃん。思い出の中でしか会えない人が増えていく。だけど、いつまでも過去にひたっていちゃだめだ。 (中略) 親子だとしても、離れたら終わり。目の前の暮らし、今一緒にそばにいてくれる人…

『凍りのくじら』 辻村深月

ドラえもんの暖かいまなざし あなたの描く光はどうしてそんなに強く美しいんでしょう。 そういう質問をまま受ける。私の撮る写真についての話だ。 それに対する私の答えは決まっている。 暗い海の底や、遥か空の彼方の宇宙を照らす必要があるからだと。 主人…

『博士の愛した数式』 小川洋子

弱いものへの無償の愛 「弱い子はみんな私が守ってあげる」 私が曾祖母のお見舞いに行ったとき、彼女が言っていた言葉です。 痩せた体に反した思いがけない、力強い言葉に驚いたことを覚えています。 年配の方が弱いものへ向ける無償の愛は何よりも力強く、…

『やめるときも、すこやかなるときも』 窪美澄

その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、 悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、 これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、 真心を尽くすことを誓いますか。 これは結婚式でよく聞く誓いの言葉です。 喜ばしい…

『本日は、お日柄もよく』 原田マハ

心のこもった言葉は世界を変える あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。そして強がらず…

『君が夏を走らせる』 瀬尾まいこ 

素直になりたい 素直になれない 金髪ピアスの不良高校生がひとりで1歳10ヶ月の女の子の子守りをしている。 みなさん、どう思うでしょうか? 「恐ろしい」 「こんなやつに小さな女の子を任せるなんて正気じゃない」 「ちゃんとした大人に子供を任せるべきだ」…

『生きるぼくら』 原田マハ

世の中には勝ち組も負け組もいない ※本の内容のネタバレを含みます。ご注意ください。 【目次】 1. いじめられっ子は負け組か? 2. 一流企業に勤める人は勝ち組か? 3. 世の中には勝ち組も負け組もいない 1. いじめられっ子は負け組か? 主人公の麻生人生は…

『革命前夜』 須賀しのぶ

動乱の年1989年 ※本の内容のメタバレを含みます。ご注意ください。 【目次】 1. あらすじ 2. イェンツはなぜヴェンツェルにトドメを刺さなかったのか 1. あらすじ 物語の舞台は1989年東ドイツ。 日本では昭和が終わり、ドイツではベルリンの壁が崩壊する激動…

『老人と海』 ヘミングウェイ作 高見浩訳

人間の生物としての本能 【目次】 1. 本の内容 2. 生と生のぶつかり合い 1. 本の内容 『老人と海』は、84日間不漁に見舞われた老人が、大物獲得を目指して一人で漁へ出るストーリーです。 老人は数日の格闘の末、超大物カジキを釣り上げますが、カジキの血を…

『サイレント・ブレス 看取りのカルテ』 南杏子

終末期医療のあり方を考える 【目次】 1. 本の紹介 2. 死を受け入れることの難しさ 3. 家族と一緒に終末期医療を考える 1. 本の紹介 『サイレント・ブレス』は終末期医療を題材にした小説です。 東京の大病院に勤務していた主人公・水戸倫子はある日、上司の…

『羊と鋼の森』宮下奈都

平凡な人間が天才に立ち向かうためにはどうすればいいか? 【目次】 1. あらすじ 2. 凡人の心得1:好きなことに熱中せよ 3. 凡人の心得2:高い目標と決意を持て 1. あらすじ ・主な登場人物 外村:高校時代に天才調律師板鳥と出会い、調律の世界に惹かれた。…