大学生の読書感想文

大好きな小説の魅力を紹介します

2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『ツナグ 想い人の心得』 辻村深月

人と人をつなげる不思議なご縁 ※この小説は辻村深月著『ツナグ』の続編です。 前編の『ツナグ』についても感想を書いているのでぜひ読んでください! ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ y-candy.hatenadiary.com 使者の依頼は"ご縁''だ。 祖母にも、大伯父にもそう教えられた。絶対…

『ツナグ』 辻村深月

残された者たちの思い 人は大切な人が亡くなった悲しみを乗り越えながら生きていく。 「また会いたい」「また話をしたい」 そんな思いがあっても、その人が死んでしまった後ではその思いは叶わない。 もし一度きりでも死者と会って話ができたらどうなるのだ…

『楽園のカンヴァス』 原田マハ

アートにかける人々の情熱 美術館には人を惹きつける独特の雰囲気がある。 一心に絵を見つめる来館者たち。その視線を受け止め、どっぷりと鎮座する鮮やかな作品の数々。 静かで厳かで、それでいて心沸き立つような不思議な感情。 そんな感情を抱くのは、魂…

『神様からひと言』 荻原浩

へっぽこ主人公の逆転劇 お客さまの声は、神様のひと言 中規模食品メーカー珠川食品の社訓として掲げられている言葉です。 一見もっともらしいことを言っているようですが、会社の実態は隠蔽、上司への媚びへつらいといった悪習はびこる旧態依然としたもので…

『さよなら獣』 朝比奈あすか

変わっていく自分と変わらない自分 10歳のとき、学校で1/2成人式というよくわからないイベントがありました。 10歳の子供から見て、大人になるのは当分先のことに思えるし、「あともう10年で成人ですよ」なんて言われても実感がわきません。 ただ、20歳にな…

なぜ小説を読むのか?

【目次】 1. 小説の価値 2. リベラルアーツと小説 3. すぐに役に立つものはすぐに役に立たなくなる 1. 小説の価値 人はなんのために小説を読むのだろう? 小説なんかなくても人は生きていける。 でも、書店には多くの小説が並んでいて多くの人が小説を買って…

『奇跡の人 The Miracle Worker』 原田マハ

自由を得るための戦い 明治時代。 日本が富国強兵、殖産興業などを掲げ、欧米に追いつけ追い越せと躍起になっていた時代です。 福沢諭吉は明治5年から『学問のすゝめ』を発行し、自由・独立・平等という日本人が今まで知らなかった価値観を紹介しました。 明…

『夜のピクニック』 恩田陸

友達との特別な時間 みなさんの思い出に残っている学校行事はなんでしょうか? 文化祭、体育祭などさまざまな行事が思い浮かぶと思います。 ぼくが数ある行事の中で、一番印象に残っているのは高校時代の強歩大会です。 強歩大会というのは、全校生徒が50km…

『そしてバトンは渡された』 瀬尾まいこ

繋がれる幸せのバトン 大家さんにお父さん、おばあちゃんにおじいちゃん。思い出の中でしか会えない人が増えていく。だけど、いつまでも過去にひたっていちゃだめだ。 (中略) 親子だとしても、離れたら終わり。目の前の暮らし、今一緒にそばにいてくれる人…

『凍りのくじら』 辻村深月

ドラえもんの暖かいまなざし あなたの描く光はどうしてそんなに強く美しいんでしょう。 そういう質問をまま受ける。私の撮る写真についての話だ。 それに対する私の答えは決まっている。 暗い海の底や、遥か空の彼方の宇宙を照らす必要があるからだと。 主人…

『博士の愛した数式』 小川洋子

弱いものへの無償の愛 「弱い子はみんな私が守ってあげる」 私が曾祖母のお見舞いに行ったとき、彼女が言っていた言葉です。 痩せた体に反した思いがけない、力強い言葉に驚いたことを覚えています。 年配の方が弱いものへ向ける無償の愛は何よりも力強く、…

『やめるときも、すこやかなるときも』 窪美澄

その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、 悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、 これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、 真心を尽くすことを誓いますか。 これは結婚式でよく聞く誓いの言葉です。 喜ばしい…

『本日は、お日柄もよく』 原田マハ

心のこもった言葉は世界を変える あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。そして強がらず…